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4×12と同じ大きさの箱に、スピーカーを3本だけ入れた

2026-10-24

ポーランドのLabogaが作る3×12キャビネット312B Mr. Hectorは、同社の4×12(412B)と外寸750×750×350mm、定格240W RMSまで同じである。中に入るのはCelestion Vintage 30が2本と、Electro-VoiceのEVM12L Black Labelが1本。4×12のG12T-75の2本が、5倍の許容入力を持つ1本に置き換わった形になる。3本では、同じインピーダンスのスピーカーをどう組んでも8Ωにも16Ωにもならない。異なるスピーカーを混ぜることが、3本という形式を成り立たせる条件にもなっている。仕様の数字だけから、非対称なキャビネットが何を引き受けたのかを読む。

ギターキャビネットの形式は、たいてい数字で呼ばれる。

1×12。2×12。4×12。

12インチのスピーカーが1本、2本、4本。並べると、きれいに倍々になっている。

Celestionは、自社のVintage 30を紹介するとき、ブティックアンプの細部を出すなら1本で、ヴィンテージ的な立体感のあるクランチなら4本組で、と書いている。スピーカーメーカー自身が、1本か4本かで語っている。

その間に、3という数字がある。

ポーランドのLabogaが作る312B Mr. Hectorは、12インチを3本入れたキャビネットである。

しかも、その箱の大きさは、同じLabogaの4×12とまったく同じだった。

3本のキャビネットは、何が面倒なのか

1、2、4が並ぶのには、理由がある。

スピーカーは、それぞれインピーダンスを持っている。ギター用なら8Ωか16Ωが多い。キャビネットの中で複数のスピーカーをつなぐと、つなぎ方によって全体のインピーダンスが変わる。

同じ16Ωのスピーカーが2本なら、並列で8Ω、直列で32Ω。

4本なら、2本ずつ直列にした組を並列にして16Ω。元のスピーカーと同じ値に戻る。

アンプの出力端子は、8Ωや16Ωに合わせて作られている。4本という数は、この値に素直に戻れる。

3本ではそうならない。

同じインピーダンスZのスピーカーを3本つなぐ方法は、全部直列で3Z、全部並列でZ/3、2本並列にして1本を直列で1.5Z、2本直列にして1本と並列で2Z/3。

Zが16Ωなら、48Ω、約5.3Ω、24Ω、約10.7Ω。

Zが8Ωなら、24Ω、約2.7Ω、12Ω、約5.3Ω。

どの組み方をしても、8Ωにも16Ωにもならない。

これは好みや流行の話ではなく、算数である。同じスピーカーを3本並べたキャビネットは、アンプ側の標準的な端子と、最初から噛み合わない。

同じ箱、同じ240W

それを踏まえて、312Bの仕様を見る。

Labogaは1973年にAdam Labogaが創業した工房で、真空管アンプ、キャビネット、ケーブルを、小さな部品から大きな部品まで手作業で作っていると自社の紹介に書いている。

312Bの製品ページには、次の数字が並ぶ。

スピーカーは、Celestion Vintage 30が2本と、Electro-Voiceの「Black Label」が1本。

箱は全面が合板。背面は閉じた密閉型で、ねじで留める。スピーカーは裏側から取り付けるリアマウント。

定格は240W RMS。インピーダンスは8Ωまたは16Ω。入力ジャックは2つで、並列につながっている。

寸法は、750×750×350mm。

ここで同じLabogaの4×12、412Bの仕様を並べる。

定格は240W RMS。インピーダンスは8Ωまたは16Ω。ジャック2つが並列。

寸法は、750×750×350mm。

外寸が、ミリ単位で一致している。定格出力も同じである。

形態の呼び方も揃っている。どちらも、斜めのスラント型を「A」、まっすぐなストレート型を「B」と呼ぶ。312Aと312B、412Aと412B。

つまり312Bは、小さくした4×12ではない。4×12と同じ大きさの箱に、スピーカーを3本だけ入れたキャビネットである。

抜けたのは、G12T-75の2本だった

では、何が減ったのか。

412Bの中身は、Vintage 30が2本と、CelestionのG12T-75が2本。こちらも、4×12の段階ですでに2種類のスピーカーを混ぜている。

312Bは、Vintage 30の2本をそのまま残している。

消えたのはG12T-75の2本で、その代わりに、Electro-Voiceのスピーカーが1本入った。

この1本が、ずいぶん性格の違うスピーカーである。

Electro-VoiceのEVM12L BlackLabelは、同社がZakk WyldeとBlack Label Societyの公式ギタースピーカーとして出しているモデルで、EVM12Lの磁気回路と通気を強化したものと説明されている。

公称の数字を並べると、差がはっきり出る。

許容入力。Vintage 30は60W。EVM12L BlackLabelは300W。5倍である。

重さ。Vintage 30は本体が4.7kg。EVM12L BlackLabelは、磁気回路だけで7.3kg、本体は8.6kg。

周波数範囲。Vintage 30は70Hzから5000Hz。EVM12L BlackLabelは80Hzから7kHz(-10dB)。

ただし、周波数範囲の数字は、メーカーごとに測り方が違う。Celestionの70Hzと、Electro-Voiceの80Hzを直接比べて、どちらが低く出るとは言えない。ここで確かに言えるのは、許容入力と重さの差のほうである。

EVM12Lという系統は、もともと大きな入力を受けても崩れにくいことで知られてきたスピーカーである。歪みをスピーカーに任せるのではなく、アンプで作った歪みを大きな音圧のまま運ぶ側に立つ。BlackLabelは、その系統の、さらに入力に強い版になる。

4×12から2本を抜き、そこに、2本分を軽く超える入力に耐える1本を入れた。312Bを仕様だけで読むと、そういう形をしている。

3本で、8Ωと16Ωをどう作るか

ここで、最初の算数に戻る。

同じインピーダンスのスピーカーを3本並べると、8Ωにも16Ωにもならなかった。

ところが312Bは、8Ωと16Ωの両方があると書いている。

鍵は、3本が同じスピーカーではないことにある。

Vintage 30には8Ω版と16Ω版がある。EVM12L BlackLabelの公称インピーダンスは8Ωで、16Ω版は製品ページに載っていない。

Labogaは、312Bの中の配線を公表していない。だから、ここから先は仕様の数字から組み立てたCSLの読みになる。

16ΩのVintage 30を2本、並列につなぐと8Ωになる。この組に、8ΩのEVM12L BlackLabelを直列につなぐと、合計は16Ωになる。

3本で、16Ωができる。

このつなぎ方には、もう一つ面白い性質がある。

直列につながった2つの部分には、同じ電流が流れる。並列にしたVintage 30の組も、EVM12L BlackLabelも、どちらも8Ωなので、アンプの電力はこの2つに半分ずつ分かれる。Vintage 30の組の側は、さらに2本で分け合う。

キャビネット全体に240Wを入れたとすると、EVM12L BlackLabelに120W、Vintage 30には1本あたり60Wがかかる計算になる。

60Wは、Vintage 30の定格そのものである。

一方のEVM12L BlackLabelは、300Wの定格に対して120Wで、まだ余裕がある。

もしこの配線なら、312Bの240Wという定格は、Vintage 30の2本が上限を決め、残りの半分の電力をEVM12L BlackLabelが1本で引き受ける、という数字として読める。

同じスピーカーを3本並べたのでは成り立たない形式が、許容入力の大きく違う1本を混ぜることで成り立つ。異種混載が、3本という数を可能にする条件になる。

ただし、この読みには弱いところが二つある。

一つは、8Ω版が同じ理屈で説明できないことである。8ΩのVintage 30を2本並列にすると4Ωで、8ΩのEVM12L BlackLabelを直列に足すと12Ω。16ΩのVintage 30を2本直列にして、8ΩのEVM12L BlackLabelと並列にすると約6.4Ω。公称のインピーダンスの組み合わせだけでは、ちょうど8Ωにはならない。8Ω版がどう作られているのかは、仕様からは分からない。

もう一つは、240Wという数字が、412Bとまったく同じだということである。412Bの中身はVintage 30が2本とG12T-75が2本で、一番定格の低いVintage 30の60Wを4本分にすると、ちょうど240Wになる。312Bの240Wが、3本の配線から計算し直された値なのか、同じ大きさの箱の定格をそのまま引き継いだ値なのか。製品ページはそこを書いていない。

算数がきれいに合うことと、メーカーがその配線を選んだことは、別の話である。

非対称は、どこに出るのか

312Bの製品ページで、Labogaはこの組み合わせについて一つだけ説明している。

多くの試験と試行を重ねた結果、このスピーカーの組み合わせは非常に独特な音を作ることが分かった、とLabogaは書く。ハイゲインのアンプと完璧に組み合わさるが、古典的な構成のギターアンプにも合う、と。

そして、このMr. Hectorのキャビネット・シリーズ自体を、重い音を好むギタリストのために作り始めた、と述べている。

どう独特なのかは、書かれていない。

3本のスピーカーが、正方形に近い箱の中でどう並んでいるのか。EVM12L BlackLabelがどの位置に入っているのか。4×12の4つ目の位置に当たる場所が、どうなっているのか。製品写真はグリルクロス越しで、中は見えない。

この記事は、配置ではなく、仕様の並びを読んでいる。

それでも、一つだけ一般的に言えることがある。

異なるスピーカーを混ぜたキャビネットでは、一本のマイクを近づけた時点で、そのマイクが拾うのは、ほぼ一本のスピーカーの音になる。312Bで言えば、Vintage 30に向けるか、EVM12L BlackLabelに向けるかで、録れるものはかなり違うはずである。

Labogaの言う「独特な音」は、3本が部屋の中で混ざったところに生まれる。近接マイクの録音は、その混ざる前の、一本ずつを拾う。混載キャビネットは、録る人に、どのスピーカーを選ぶかという判断を最初から渡してくる。

倍々ではない形式を、残しておく

1×12、2×12、4×12という呼び名は、スピーカーの本数の話に見える。

だがその裏には、インピーダンスという、本数を倍々に揃えたくなる理由がある。同じスピーカーを並べるかぎり、3本は収まりの悪い数である。

312Bは、その数をそのまま使った。

外寸は4×12と同じ。定格も同じ。中身は、4×12から2本を抜き、性格のまったく違う1本を足した。

3本が成り立つのは、3本が違うスピーカーだからでもある。

キャビネットの形式を、1、2、4の段階で覚えていると、この箱は数え間違いのように見える。仕様を並べると、それは数え間違いではなく、違うスピーカーを混ぜることでしか作れない、もう一つの段だったことが見えてくる。


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