Jensenは1960年代末にスピーカーの生産を止め、30年近く経った1996年から、イタリアのSICAがライセンスを受けて作り直した。工場も人も工程も残っていない復刻で、いったい何が継がれたのか。名前と権利、資料と製造設備、型番体系、そして音の目標。四つに分けて数えると、「オリジナルと同じ仕様」という言葉が誰の側の厳密さなのかが見えてくる。Fender向けP10Rとネオジムの「Vintage」シリーズが、その答えをさらに複雑にする。
実機を録る / 設計を読む
ギターアンプの設計思想を記録し、弾ける形にする
実機ギターアンプを収録し、Kemperプロファイルとして販売しています。同時に、アンプの設計思想・歴史・音作りを記事として記録しています。
Jensenは1960年代末にスピーカーの生産を止め、30年近く経った1996年から、イタリアのSICAがライセンスを受けて作り直した。工場も人も工程も残っていない復刻で、いったい何が継がれたのか。名前と権利、資料と製造設備、型番体系、そして音の目標。四つに分けて数えると、「オリジナルと同じ仕様」という言葉が誰の側の厳密さなのかが見えてくる。Fender向けP10Rとネオジムの「Vintage」シリーズが、その答えをさらに複雑にする。
KemperとNAMは、同じ「アンプを保存する道具」に見える。だが実際に比べると、やっていることは驚くほど近く、違うのは別の場所にある。どちらもアンプの非線形応答を推定し、どちらも「スピーカーを含めて録るか、外して録るか」という同じ二択を持つ。分かれるのは、その形式がどこに住んでいるか。そしてIRだけが、なぜ両方に載るのか。線形という一語が、その理由になっている。
2016年、Elektronは八つのアナログ歪み回路を持つ製品を二つ発売した。片方は卓上のAnalog Heat、片方は足元のAnalog Drive。回路の考え方は近いのに、いま新品で買えるのは卓上のほうだけである。音質でも部品でもなく、プリセットをどう呼び出すかという一点に、シンセの文法とギターの文法の違いが出ていた。優れた設計が別の文化へ渡るとき、何が翻訳されず残るのかを、Elektronの製品史からたどる。
多くのハイゲインアンプに、DepthやResonanceというノブが付いている。低音を足すつまみだと思われがちだが、設計側の説明は違う。Fryetteの取扱説明書もPeaveyの取扱説明書も、そしてPeaveyの特許も、これを「ダンピングファクターを変える回路」として説明している。トーンコントロールではなく、帰還の設計である。
変わった形のキャビネットは、たいてい外側が変わっている。だが3rd PowerのDS412は、外から見ると普通の4×12である。変わっているのは内側で、箱の中が四つの三角形の部屋に分かれている。しかも一室だけ開放で、残り三室は密閉。三角形は見た目のためではなく、反射を抑え、経路を分けるための形だった。
King Crimson、U.K.、Asia。John Wettonは三つのバンドで、まったく違う音楽を成立させている。だが「どのバンドでも自分の色を出した」という説明では足りない。本人の言葉を並べると、彼が変えていたのは音色ではなく、アンサンブルの中での自分の機能だった。主導権を取り合う即興のベーシストから、歌を担う支柱へ。そして曲を最優先する共作者へ。
Soldano SL-60 を、リアクティブロード経由のダイレクトアンププロファイルとして収録した。キャビネットは別収録の Marshall 1912 の IR。HI と LO の2入力それぞれ6設定ずつ、計12音色 × 3マイク × Center/Edge の72本。掛け算で増える収録を、足し算に変えた話。
Soldano SL-60は日本で作られた。Michael Soldanoが初めて手がけた低価格機で、設計は本人、製造は日本の工場、企画を持ちかけたのは当時の日本の輸入代理店だった。だが一年で終わっている。音は良かった、と本人は言う。終わった理由は音ではなかった。回路はSLO-100のオーバードライブ・チャンネルそのもので、そこから何を削り、何を残したのかも合わせて読む。
ギタースピーカーは長いあいだ、アンプの中に入っている名前のない部品だった。1966年にAmpeg向けの18インチを一日三本作るところから始まったEminenceは、Fender、Peavey、Mesa/Boogieらの箱の中で無記名のまま鳴り続け、2000年に自社ブランドの流通を始める。PatriotとRedcoat、そしてtone guide。この会社が売り始めたのは部品ではなく語彙だった。スピーカーが「交換部品」から「選ぶ音色」へ変わった産業構造の話として整理する。