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三角形のキャビネットは、箱の中にあった。3rd Power DS412が分けたのは、外観ではなく経路である

2026-09-05

変わった形のキャビネットは、たいてい外側が変わっている。だが3rd PowerのDS412は、外から見ると普通の4×12である。変わっているのは内側で、箱の中が四つの三角形の部屋に分かれている。しかも一室だけ開放で、残り三室は密閉。三角形は見た目のためではなく、反射を抑え、経路を分けるための形だった。

奇抜な形のキャビネットは、ときどき出てくる。

三角形。台形。円筒。斜めに切り落とした箱。見た目で覚えられるし、写真映えもする。だが多くの場合、変わっているのは外側である。

3rd PowerのDS412は、そこが逆になっている。

外から見ると、ごく普通の4×12である。長方形で、スピーカーが四つ縦横に並んでいる。三角形の要素は、どこにも見えない。

三角形は、箱の中にある

内部が、四つの部屋に分かれている

このキャビネットの中身は、ひとつの空洞ではない。

四つの三角形の部屋に仕切られていて、スピーカーはそれぞれ別の部屋に収まっている。メーカーはこの構造を「embedded triangular speaker chambers」と呼び、その目的を定在波と内部反射を消すことだと説明している。

普通の4×12は、四つのスピーカーが同じ空洞を共有している。ひとつの箱の中で四つが同時に鳴り、内部の空気は全部つながっている。だから背面の反射が回り込むし、寸法によっては特定の周波数が箱の中で立ってしまう。

平行な面が向かい合っていると、その間で音が往復する。距離に応じた周波数が強め合い、そこだけ持ち上がる。これが定在波である。

三角形の部屋には、向かい合う平行面が少ない。同じ体積でも、内部で音が往復しにくい形になる。

だから三角形は、装飾ではない。箱の内側の幾何を変えるための形である。

一室だけ開放、三室は密閉

もうひとつ、この設計には非対称がある。

四つの部屋がすべて同じではない。一室が開放(オープンバック)で、残る三室が密閉(クローズドバック)である。加えて、調律されたポートを持つ。

これは奇妙に見える。ふつう4×12は、開放なら全部開放、密閉なら全部密閉である。それが箱の性格を決める。

だがこのキャビネットは、一つの箱の中に、性格の違う部屋を同居させている

開放の部屋は、背面から音が回り込み、広がりが出る。密閉の部屋は、低域が締まり、前方への指向が強くなる。その両方が、同じ筐体の中で並んでいる。

四つのスピーカーが同じ空洞を共有していたら、こういうことはできない。部屋を分けたから、部屋ごとに性格を変えられる

一台で、wet/dry/wetが組める

ここまでが構造の話で、ここからが用途の話になる。

部屋が独立していると、スピーカーごとに別々の信号を送れる。メーカーはこのキャビネットで、次のような使い方ができると説明している。

  • モノラルの4×12として使う
  • 上下で分けて2×12を二組にする
  • ステレオの2×12(縦でも横でも)
  • X字に振り分ける
  • 四つを完全に独立した経路として使う
  • そして wet/dry/wet

最後のwet/dry/wetが、この設計の狙いである。メーカーは、本格的なwet/dry/wetリグの音の広がりを、一つの筐体へ収めることを設計目標に挙げている。

具体的にはこうなる。ドライのヘッドが下の二発をモノラルの2×12として鳴らし、パワーアンプが上の二発をステレオで鳴らして、そちらにエフェクトの音を送る。

wet/dry/wetは本来、キャビネットを三台並べる構成である。中央に原音、左右に効果音。ステージを広く使い、運搬も大変になる。それを4×12一本に畳んでいる。

分けたのは、外観ではなく経路である

整理すると、このキャビネットがしていることは二段になっている。

第一に、内部の幾何を分けた。三角形の部屋にすることで、平行面を減らし、反射と定在波を抑える。

第二に、経路を分けた。部屋が独立しているから、スピーカーごとに違う信号を入れられる。開放と密閉を混ぜることも、一台でwet/dry/wetを組むこともできる。

前者がなければ後者は成立しない。部屋を仕切ったことが、両方の理由になっている

三角形という形は、そのどちらにも効いている。反射を散らす形であり、四つの区画を無駄なく詰める形でもある。長方形の外装の中に四つの三角形を入れると、対角線で切る形に収まる。

外側を変えずに、内側だけを変えている

メーカーの説明であって、測定ではない

一点、区別しておきたいことがある。

定在波を消すという説明は、メーカーによるものである。通常の箱と同条件で比較した独立の測定を、私は確認していない。三角形の部屋がどの程度それを抑えるのか、数値としては見ていない。

理屈としては筋が通っている。平行面が減れば往復は起きにくい。だが「起きにくい」と「どれだけ減るか」は別の話である。

同様に、この構造が音として何をもたらすかも、聴かなければ分からない。ここでは構造の記述に留める。

形は、見えるところにあるとは限らない

キャビネットを選ぶとき、目に入るのは外形である。

4×12か2×12か。直型か斜め型か。大きいか小さいか。板の厚さ、素材、背面が開いているか閉じているか。どれも外から確認できる。

だがDS412が示しているのは、同じ外形の中に、まったく違う内部を作れるということである。長方形の箱の中で、空気をどう区切り、どこを開け、どこを閉じ、どの信号をどこへ送るか。そこは外から見えない。

奇抜な外観のキャビネットは、たいてい外側で目立とうとしている。この一台は逆で、目立たない外側の中に、込み入った内部を持っている

キャビネットは、スピーカーを取り付ける枠ではない。空気をどう扱うかの設計である。そのことが、外から見えない形で入っている例だと思う。


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