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KemperのInputは、なぜ軽視できないのか

2026-06-17

KemperのInputセクション、特にClean SenseとDistortion Senseが、プロファイルの反応をどう左右するのかを整理する。ギター差が入力信号として現れる仕組みと、CSLが入力条件を揃える理由をあわせて説明する。

Kemperを使うとき、多くの人が最初に触るのはRigの選択である。

次にGain。次にEQ。

その先にあるエフェクト。

Inputは、たいてい後回しになる。

画面の左端に小さく置かれた、地味なセクションである。設定したことを忘れている人も少なくない。

だが、同じプロファイルが人によって違って聞こえる理由の多くは、ここにある。

Inputは「入口」そのものである

Kemperの信号は、ギターから始まる。

ギターの出力は、まずInputセクションを通る。Rigに届くより前である。

つまりInputは、プロファイルの手前にある関所のようなものである。

ここで信号がどう受け止められるかが、その後の歪み方を決める。

Rigをいくら選び直しても、入口の条件が違えば、出てくる音は同じにならない。

アンプの前にエフェクターを置くか置かないかで音が変わるのと、構造としては同じである。違うのは、それがデジタルの「入口」で起きているという点だけである。

だからこそ、Inputは軽視できない。

Clean Senseとは何を揃える設定なのか

Inputの中心にあるのが、Clean SenseとDistortion Senseである。

まずClean Senseから整理する。

Clean Senseは、クリーンな音の音量感を揃えるための設定である。

ギターによって出力レベルは違う。シングルコイルとハムバッカーでは、弦をはじいたときにアンプへ送り込まれる信号の強さが違う。

同じプロファイルでも、出力の強いギターをつなぐとクリーンが大きく聞こえ、出力の弱いギターでは小さく聞こえる。

Clean Senseは、この差を埋めるための調整である。

出力の弱いギターならClean Senseを上げ、強いギターなら下げる。そうすることで、複数のギターをつないでもクリーンの音量感が揃う。

ここで重要なのは、Clean Senseが「歪みの量」を直接いじる設定ではない、ということである。

これはクリーン側の基準を合わせるための設定である。歪みのキャラクターを決める設定ではない。

Distortion Senseは何をしているのか

歪み側に関わるのが、Distortion Senseである。

Distortion Senseは、ギターの出力レベルが歪み量へどう反映されるかを調整する。

値を上げると、入力の強いギターほど深く歪む方向になる。下げると、ギター出力の違いによる歪み量の差が小さくなる。

工場出荷時の基準は、特定のギターを想定して決められている。

そこに自分のギターをつなぐと、想定より強い信号、あるいは弱い信号が入る。すると、プロファイルが「設計時に受け取っていた信号」とは違う信号を受け取ることになる。

歪みは、入力の強さに敏感である。

少し強く入れば、歪みは深くなる。少し弱く入れば、歪みは浅くなる。

Distortion Senseは、その敏感さをどう扱うかを決めるノブである。

多くの場合、ここはデフォルトのままでよい。ただし、出力が極端に高いギターや低いギターを使うときには、見直す価値がある。

なぜギターを替えると反応が変わるのか

ここで一度、プロファイルそのものに立ち返る。

Kemperプロファイルは、何でできているか。

プロファイル本体は、主にKemperの解析信号と、アンプ・キャビネット・マイクの応答によって作られる。

作るときに弾いたギターの「音色そのもの」が、プロファイルの中に固定して焼き付くわけではない。

固定されるのは、アンプとキャビネットとマイクがどう反応する箱なのか、という応答の方である。

その箱に、演奏時、自分のギターの信号が入る。

だから、完成したプロファイルの反応は、演奏時に入力されるギター信号によって変わる。

同じプロファイルでも、出力の高いギターで弾けば押し込まれて歪み、低いギターで弾けば余裕が残る。ピックアップの種類、ボリュームの位置、弾く強さ。それらはすべて、入口へ届く信号の違いになる。

「このギターでプロファイルした音」という言い方は、正確ではない。

正しくは、こうなる。

このプロファイルを演奏するときの反応は、使用ギターの入力信号によって変わる。

そして、その入力信号を最初に受け止めるのが、Inputセクションなのである。

設定を「揃える」と「変える」は別である

ここで誤解を避けたい。

Inputを調整する目的は、音を良くすることではない。

基準を揃えることである。

複数のギターを持ち替えても音量感や歪み量の出方が揃っていれば、プロファイルそのものの違いを正しく比較できる。

逆に、入口の条件がバラバラだと、プロファイルの違いを聞いているのか、ギター差を聞いているのか、区別がつかなくなる。

Clean SenseとDistortion Senseは、その区別をつけるための道具である。

どちらが正しい設定というものはない。ただし、何を基準にしているのかは、はっきりさせておいた方がよい。

基準があいまいなまま「このプロファイルは歪みすぎる」「思ったより細い」と判断すると、それはプロファイルの評価ではなく、入口の評価になっている可能性がある。

CSLが入力条件を揃える理由

CSLは、実機の真空管アンプを収録し、Kemperプロファイルとして提供している。

収録するとき、入口の条件を揃えることを重視している。

理由は、ここまで書いてきたことと同じである。

入力信号が違えば、同じアンプでも違う歪み方をする。だから、何の信号で記録したのかを揃えておかなければ、後から条件を比較できない。

CSLでは、プロファイル作成時のリファインにもリアンプを使っている。

毎回人間が弾くのではなく、同じDI信号を使う。そうすることで、入力条件を揃えるためである。

人が弾くと、その日のピッキングや手癖が入力信号に乗る。それ自体は悪いことではない。だが、条件を揃えて記録したい場面では、揺れになる。

同じDI信号をリアンプして入れれば、入口は毎回同じになる。

この考え方は、使う側のInput設定とも地続きである。

CSLが収録時に入口を揃えるのと、演奏者がInputで自分のギターの基準を揃えるのは、向きが逆なだけで、同じことをしている。

どちらも、「プロファイルの違い」と「入力信号の違い」を混ぜないための作業である。

まとめ

KemperのInputは、地味なセクションである。

だが、プロファイルの手前にある入口である。

Clean Senseは、ギター出力の差によるクリーンの音量感を揃える設定である。Distortion Senseは、入力の強さが歪み量へどう反映されるかを調整する設定である。

どちらも、音を派手に変える機能ではない。基準を揃える機能である。

Kemperプロファイルの反応は、演奏時に入力されるギター信号によって変わる。だから、入口をどう設定しているかを把握しておくことには意味がある。

プロファイルを評価する前に、まず入口を見る。

そうすると、聞いているのがアンプの違いなのか、自分のギターの違いなのかが、少しずつ切り分けられるようになる。


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