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Carvin Vintage 16は、4本用のトランスを2本で鳴らす

2026-10-13

EL84を2本、16Wと5W、12インチ1発。Carvin Vintage 16は、小さなAC30やMatchless系の仲間に見える。だがCarvin公式の回路図の隅には「4本用の出力トランスを2本で使う」と書かれ、その部品番号はEL84を4本積むVintage 33と同じだった。固定バイアス、全体負帰還、ロングテール型位相反転、キャビネット特性付きのライン出力。小さく設計されたアンプではなく、大きなアンプを縮めたアンプとして、回路図から読み直す。

EL84が2本。

出力は16Wと5Wの切り替え。

12インチのスピーカーが1発。

この並びを見ると、たいていの人は同じ棚を思い浮かべる。Vox AC30を小さくしたもの、あるいは1990年代にMatchlessが広めた、EL84のブティック・アンプの小型版である。

Carvin Vintage 16も、ふつうはその棚に置かれる。見た目も仕様も、そう読める。

ところが、Carvinが公開している回路図の隅に、こう書いてある。

4本用の出力トランスを、2本の真空管で使う。8Ωのスピーカーには、緑の「4½」タップを使うこと。

このアンプは、小さく作られたのではなかった。大きく作られたものを、縮めてあった。

回路図の一行と、部品番号

Carvinは、自社の旧製品の取扱説明書と回路図を公式サイトで公開している。Vintage系列の回路図は、一つのPDFにまとめられている。

Vintage 16の図面は、2002年2月に描かれ、2011年4月に改訂されたものである。出力トランスの横に、先ほどの注記がある。

出力トランスの部品番号は15-02066。

同じPDFに、Vintage 33の図面がある。1994年に描かれ、1996年に改訂された図面である。こちらはEL84を4本積んだ、2チャンネルのアンプだ。その出力トランスも、15-02066である。

つまりVintage 16は、Vintage 33の出力トランスを流用し、真空管を4本から2本に減らした構成になっている。

真空管を半分にすると、出力管が求める負荷の大きさが変わる。8Ωのスピーカーを、本来より低いタップへつなぐよう指定しているのは、その差を合わせるためと読める。

小さいアンプのために、小さいトランスを用意したのではない。大きいアンプの部品で、小さいアンプを組んだ。

Vintage系列は、大きなアンプから始まった

この順番は、系列の歴史とも合っている。

Carvinは1995年に、Vintage Tube Seriesを立ち上げた。最初の顔ぶれは、Vintage 33、1×12コンボのNomad、2×12のBel Air、50WのVT50である。Vintage 16は、この最初の群には入っていない。後から加わった。

取扱説明書は、この系列を全段真空管の設計として紹介している。ICもFETもトランジスタも使わない、と書く。

系列の出発点は、ステージで使う大きさのアンプだった。Vintage 16は、その末っ子として出てきた。

縮めたのは真空管の本数で、設計の考え方ではない

回路図を、入口から順に追ってみる。

ギターの信号は、最初の12AX7で増幅される。次にSoakと名付けられたつまみを通り、もう一段の12AX7へ入る。そのあとにVolume、Bass、Mid、Trebleの受動的なトーン回路がある。

その先が位相反転段である。12AX7の二つの三極管で、信号を逆相の二つに分ける。ロングテール型と呼ばれる方式で、出力管を2本以上で押し引きさせるアンプの標準的な作り方である。

出力管のEL84は、2本でプッシュプル動作をする。カソードは接地されていて、グリッドに負の電圧をかけてバイアスを決める。固定バイアスである。図面には、2本で40mAに調整するよう書かれている。

そして、出力トランスの二次側から、82kΩの抵抗を通って位相反転段へ戻る線がある。全体負帰還である。

ここまでの骨格は、EL84を4本積むVintage 33と同じである。Vintage 33も、ロングテール型の位相反転段から、固定バイアスのEL84を押し引きさせている。違うのは、チャンネルの数と、出力管の本数である。

取扱説明書には、もう一つ大きなアンプの作法が残っている。ライン出力が「キャビネット・ボイス」、つまりスピーカー・キャビネットの特性を付けた出力になっている。ミキサーや録音機へ直接送ることを前提にした機能で、これも系列の兄たちと共通である。

2011年に改訂された図面には、インピーダンス切り替えに「SILENT」の位置まである。内蔵の抵抗を負荷にして、スピーカーを鳴らさずにライン出力だけを使う配線と読める。初期の個体に同じ機能があったかは、この図面からは分からない。ただ、少なくとも後年のVintage 16は、小さな箱のまま、録音用の出口まで抱えていた。

16Wと5Wは、音量つまみの代わりではない

16Wと5Wの切り替えも、縮小の仕方をよく表している。

出力を下げる方法はいくつかある。スピーカーとの間に抵抗を入れて音を削る方法もあるし、真空管にかける電圧を下げる方法もある。

Vintage 16のやり方は、出力管の動作そのものを切り替えるものである。取扱説明書は、ペントードの16Wとトライオードの5Wを切り替える前に、電源を切るよう指示している。

EL84は、本来は五極管である。トライオード接続では、一般に、そのうちの一つの電極を陽極とつなぎ、三極管として動かす。出力は下がり、歪み方も変わる。音を削るのではなく、別の動き方をさせる。

取扱説明書は、低出力の使い道をこう書いている。SoakとVolumeの両方を上げて、違う歪みを得られる。

Soakで前段を歪ませ、Volumeで後段まで押し込む。大きなアンプなら、両方を上げると音量が大きすぎる。出力を下げれば、その組み合わせが部屋の中で使える。

なお、同じ取扱説明書の背面パネル図では、切り替えの表記が「NORMAL 15 WATTS」「TRIODE 6 WATTS」になっている。仕様表の16Wと5Wとは、数字が少し違う。

Matchlessとは、設計の向きが逆である

ここで、最初に思い浮かべた棚へ戻る。

Matchlessは、自社の取扱説明書で、自分たちのアンプをこう説明している。カソードバイアスで、ほぼA級で動作する。そして、すべてのMatchlessアンプは負帰還を持たない。

カソードバイアスは、出力管のカソードに抵抗を入れて、管自身の電流でバイアスを決める方式である。負帰還をかけないので、出力の動きがそのまま前段へ戻ることはない。Matchlessはこれを「オープンループ」と呼んでいる。

Vintage 16は、固定バイアスで、全体負帰還をかけている。

同じEL84を使い、同じくらいの大きさの箱に入っていても、二つは逆の方向を向いている。Matchless型の小さなアンプ、という読み方は、真空管の銘柄と見た目の話であって、回路の話ではない。

ここで言えるのは、設計の向きが違う、ということまでである。CarvinがMatchlessやAC30を参照したかどうかについて、当事者の説明は無い。後から出たEL84アンプだから模倣だ、とも、逆を向いているから対抗だ、とも言えない。

同じころ、Carvinは100Wも作っていた

縮小は、Carvinが小さい方向へだけ進んだことを意味しない。

Vintage系列を立ち上げた翌年の1996年、Carvinのカタログには、MTS3200という新しい真空管アンプが加わっている。取扱説明書によれば、出力は50Wと100Wの切り替えで、出力管は5881を4本。2チャンネルである。

一方には、EL84を4本から2本に減らし、5Wまで下げられるアンプがある。もう一方には、5881を4本積んだ100Wのアンプがある。

同じ会社が、同じ時期に、反対の要求に別々の機種で応えていた。

ここから見えるのは、時代が大出力から小出力へ一方向に移った、という単純な話ではない。大きな音で鳴らす要求と、小さな音で同じ歪みを得たい要求が並んでいて、Carvinはそれを別の箱に分けた。Vintage 16は、その片方を、すでに持っていた大きなアンプの設計から切り出して作った。

小さなアンプには、二つの作り方がある

小型の真空管アンプは、ひとまとめに語られやすい。出力が小さく、箱が小さく、家で鳴らせる。

だが作り方を見ると、少なくとも二つの系統がある。

一つは、最初から小さく設計されたアンプである。出力管が1本だけの単端アンプは、その典型である。小さいことが、設計の出発点になっている。

もう一つは、大きなアンプを縮めたアンプである。出力管の本数を減らし、電圧や動作を切り替えて、出力を下げる。位相反転段、バイアスのかけ方、負帰還、ライン出力といった骨格は、大きなアンプのものが残る。

Vintage 16は、はっきり後者である。4本用のトランスを2本で鳴らしている、という一行が、それを示している。

小さなアンプを選ぶとき、出力のワット数と真空管の銘柄だけでは、どちらの系統なのか分からない。音量を下げたときに、何が残り、何が変わるのか。その答えは、回路図の側に書いてある。

まとめ

Carvin Vintage 16は、EL84を2本使う16Wと5Wの小型アンプで、見た目も仕様も、小さなAC30やMatchless系の仲間に見える。

だがCarvin公式の回路図には、4本用の出力トランスを2本で使うという注記があり、その部品番号は、EL84を4本積むVintage 33と同じである。ロングテール型の位相反転、固定バイアス、全体負帰還、キャビネット特性付きのライン出力という骨格も、兄たちと共通している。

16Wと5Wの切り替えは、出力管をペントードとトライオードで動かし分ける方式で、音を削るものではない。Matchlessが自社の方針として掲げるカソードバイアスと負帰還なしの設計とは、逆の向きである。

同じころCarvinは、5881を4本積んだ100WのMTS3200も作っていた。大きな音の要求と小さな音の要求を、別の箱に分けた。その小さい方の箱は、大きなアンプの設計から切り出されていた。

小さく作られたアンプと、小さく縮められたアンプは、同じ「小型アンプ」と呼ばれる。Vintage 16の回路図は、その二つを見分ける手がかりを、一行で残している。


このVintage 16のKemperプロファイル

CSLでは、このVintage 16をTriode(5W)の状態でKemperプロファイルに記録している。スピーカーは本体のCelestion Vintage 30。マイクはSM57、GT-67、その60:40のブレンドの3構成で、4つの音色をそれぞれCenterとEdgeで残した24本である。

縮めて作られた小さなアンプが、5Wでどう鳴るか。無料サンプルで、手元のKemperで確かめられる。


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