Kemperでプロファイルを使っていると、あるとき設定の意味が変わったように感じることがある。
GainやEQのつまみを回したときの反応が、以前より「そのアンプらしく」動くようになった。 これはLiquid Profilingという仕組みが加わったことによる変化である。
プロファイルが何を記録したものか、という前提が、ここで少し動いた。 だとすれば、収録する側が何を残しておくべきかも、合わせて考え直す必要がある。
従来のProfilingは、何を記録していたのか
Kemperのプロファイリングは、もともと「ある設定で鳴っていたアンプの状態」を 丸ごと写し取る仕組みである。
実機のつまみをある位置に決め、その状態の音をKemperが解析する。 出来上がるのは、その一点の状態を写したプロファイルである。
ここで重要なのは、写し取られるのが基本的に「その一点」だという点である。
たとえばGainを上げ目にしたアンプをプロファイルすれば、その歪み量が記録される。 そのプロファイルをKemper側で呼び出し、Kemper上のGainつまみを下げることもできる。
ただし、従来の仕組みでは、そのKemper側のつまみの動きは、必ずしも実機の そのアンプのつまみと同じようには動かなかった。 Kemperが用意した汎用的なGain・EQの動き方で調整される、という性格があった。
つまり、プロファイルは「写した一点」としては正確でも、そこから動かしたときの 反応までは、実機そのものを再現していたわけではなかった。
この性格があったからこそ、CSLでは「どの設定で写したか」を明示することを 重視してきた。動かした先の保証ができない以上、写した一点の条件こそが、 購入者にとっての判断材料になるためである。
Liquid Profilingは、何を変えたのか
Liquid Profilingは、この「つまみを動かしたときの反応」に踏み込んだ仕組みである。
ポイントは、Tone Stackという考え方にある。 Tone Stackとは、アンプのEQ回路、つまりBassやMiddle、Trebleといったつまみが 互いに影響しながら音を作る、その仕組みのことを指す。
アンプによって、このTone Stackの効き方は違う。 あるアンプではMiddleを下げると低域と高域が一緒に持ち上がるように感じられ、 別のアンプではそうならない。EQは独立しておらず、互いに干渉している。
従来のKemperでは、この干渉の仕方までは、プロファイルごとに再現していなかった。 Liquid Profilingでは、アンプのTone Stackの種類を指定することで、EQつまみが そのアンプらしい効き方をするようになった。
Gainについても近いことが言える。 つまみを動かしたときの歪みの増え方が、より実機の挙動に近づくよう扱われる。
結果として、プロファイルは「写した一点」から、「ある程度そのアンプらしく 動かせる記録」へと、性格を変えたことになる。
ここで注意したいのは、これを「完全再現」とは言えないという点である。 Liquid Profilingは実機の挙動に近づける仕組みであって、実機そのものに なるわけではない。近づいたのは事実だが、言い切れる範囲は冷静に見ておきたい。
だからこそ、GainとTone Stackの情報が重要になる
プロファイルが「動かせる記録」になったことで、収録時の情報の意味が変わる。
従来は、写した一点さえ正確なら、それが商品の中心だった。 動かした先は保証の外だったため、「どこで写したか」を伝えれば足りた。
Liquid Profiling以降は、つまみを動かしたときの反応が、そのアンプの Tone Stackの種類に結びつく。 だとすれば、「このプロファイルはどのTone Stackを前提にしているか」という 情報が、再現性に直接関わってくる。
Gainについても同じである。 収録時に実機のGainをどの位置にしていたか。その一点が、Liquid Profilingによる 反応の基準点になる。基準点が曖昧なまま動かしても、何を起点に動かしているのかが 分からなくなる。
これは、つまみの数字を細かく書けばよい、という単純な話ではない。 そのプロファイルが、どのアンプのどういうEQの効き方を前提にしているのか。 その前提を、購入者が読める形で残しておく必要がある、ということである。
写した一点の条件に加えて、その一点を起点に「どう動かせるように作られているか」。 記録すべき範囲が、一点から、一点とその周辺へと広がったと考えてよい。
CSLでは、条件をどう表示するか
CSLが収録時に明示してきたのは、Gain、Cab、Mic Position、入力条件である。 これは、プロファイルがアンプ名だけでは選べないという考え方に基づいている。
Liquid Profiling以降も、この方針の軸は変わらない。 ただし、表示する条件にTone Stackの前提を加える意味が出てきた。
具体的には、そのプロファイルがどの方向性のアンプを写したものか、 収録時のGainがどのあたりだったか、EQをどの位置で写したか。 これらを、これまで以上に基準点として扱う。
CSLでは、商品ページで実在アンプ名をそのまま出すことは慎重に扱っている。 「英国系」「米国系」といった方向性表現を使う方針は、ここでも変わらない。
むしろ、アンプ名に頼らない分、Tone Stackの効き方やGainの基準点といった 条件説明は、より丁寧にする必要がある。 Liquid Profilingは、その条件説明が効いてくる場面を増やした、と見ている。
注意書きの考え方も同じである。 Liquid Profilingで動かせる範囲が広がったからといって、「どんな音にもなる」とは 書かない。あくまで、ある一点を起点に、そのアンプらしく動かせる記録である。 保証する範囲と、しない範囲を分けて書く姿勢は変えない。
CSLで記録する意味
Liquid Profilingは、プロファイルの性格を変えた。 固定された一点の写しから、起点を持った調整できる記録へと近づいた。
それでも、CSLが残したいものは変わっていない。 唯一絶対の正解音ではなく、その時点で整えられ、実際に鳴っていた一台の記録である。
変わったのは、その「一台の記録」が、以前より動かせるようになったという点である。 動かせるようになったからこそ、起点となる条件を正確に残す意味が増した。
どこで写したか。どのTone Stackを前提に動くか。どの入力条件で記録したか。 これらは、プロファイルを「動かす」ための地図のようなものである。
地図がなければ、動かせる記録も、どこから動かしているのか分からなくなる。 CSLが条件を明示し続けるのは、その地図を購入者に渡すためである。
まとめ
Liquid Profilingは、Kemperのプロファイルに「つまみを動かしたときの反応」を 近づける仕組みである。
Tone Stackの種類を前提にすることで、EQやGainの効き方が、より写した アンプらしく動くようになった。 プロファイルは、固定された一点から、起点を持った調整できる記録へと性格を変えた。
ただし、これは完全再現ではない。近づいたという事実を、冷静に扱う必要がある。
だからこそ、収録時のGainやTone Stackの前提を、基準点として残す意味が増した。 CSLが条件を明示し続けるのは、その記録をどこから動かせるかを、購入者が 読める形にしておくためである。
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