Kemperプロファイルのラインナップを見ていると、同じアンプ名のプロファイルが 「通常版」と「Boosted版」のように分かれていることがある。
これは単なる品番違いではない。ブースターを通した音を、別の収録として扱うか、 そもそも作らないかという判断が、その都度されている。
CSLでは、ブースターを使ったプロファイルを無条件には作らない。 ここでは、何を基準にBoostedプロファイルを作る・作らないと決めているかを整理する。
ブースターは何をしているのか
ブースターという機材は、ギターからアンプへ向かう信号を、アンプに入る前に 持ち上げる役割を持つ。
持ち上げ方には種類がある。単純に音量だけを上げるもの、特定の帯域を強調するもの、 わずかに歪みを加えるものなど、機種ごとに性格が違う。
重要なのは、ブースターが音を作っているわけではないという点である。 ブースターが変えているのは、アンプに入る前の信号の状態である。 その信号を受け取ったアンプが、結果としてどう反応するか。 これがブースターを通した音の正体である。
だからこそ、ブースターの効果はアンプ側の反応に強く依存する。 同じブースターを使っても、アンプが違えば結果は違う。
CSLの標準収録は、何も挟まない状態を基準にする
CSLでは、プロファイルの標準収録において、ブースターを含む外部機材を 基本的に挟まない状態を基準にしている。
理由は単純で、まず素のアンプの反応を記録しておかないと、 比較のための土台がなくなるからである。
ブースターを通した音が良いか悪いかは、ここでは問わない。 良し悪しの話ではなく、「何も挟まない状態を基準にしておく」という 収録上の取り決めの話である。
基準があるからこそ、その先にあるバリエーションを意味のある形で 追加できる。基準がないまま個別のバリエーションだけを増やしていくと、 何と何を比較しているのか、後から分からなくなる。
Boostedは、標準収録の代わりではない
CSLでブースターを使ったプロファイルを作る場合、それは標準収録を 置き換えるものではなく、別バリエーションとして追加する形にしている。
ここで具体例として挙げられるのが、CSLで実際に使っているEx-pro 31volt SOLO BOOSTERである。
このブースターは、回路を31V駆動にすることで、低い電圧の機材とは 異なるヘッドルームを持たせている。クリーンブースターという扱いの製品で、 強い歪みを足すタイプではない。
ただし、これは「このブースターが優れているから常用する」という話ではない。 CSLにとってこの機材は、標準収録に対するもう一つの条件を 作るための道具という位置づけである。
Boostedとして収録する場合も、何も挟まない収録と同じキャビネット、 同じマイク位置、同じ入力条件をそろえる。変える条件はブースターの 有無だけにする。条件を一つに絞ることで、比較した際に何が効いているのかが 分かりやすくなる。
効果が出るアンプと、出ないアンプ
ブースターを通すと、すべてのアンプが同じように変化するわけではない。
ゲインに余白があるアンプは、ブースターによる入力の変化を 比較的はっきりと反応に変換する。歪みの密度が増えたり、 立ち上がりが変わったりすることが分かりやすい。
一方で、すでにゲインを使い切っているアンプや、入力に対する感度が それほど高くないアンプでは、ブースターを通しても変化が小さいことがある。 聴感上の差がほとんどない場合、Boostedとして別収録する意味は薄くなる。
CSLでは、この違いをアンプごとに確認したうえで、Boostedプロファイルを 作るかどうかを判断している。
「ブースターを使えば良くなる」という前提でラインナップを増やすのではなく、 「このアンプはブースターによる差が記録に値する」と判断できた場合にだけ、 Boostedを追加する。
差が小さいアンプにBoostedを用意しても、購入者にとっては 選択肢が増えるだけで、実際に違いを感じにくい。 ラインナップを増やすこと自体を目的にはしない。
CSLでBoosted収録を考えるときの順序
CSLでは、Boostedプロファイルを検討する際、おおむね次の順序で確認している。
まず、標準収録の状態で、そのアンプの反応とゲインの余白を把握する。 次に、同じ入力条件・同じキャビネット・同じマイク位置のまま、 ブースターだけを足して鳴らしてみる。
そのうえで、標準収録との違いが、単なる音量差ではなく、 歪みの質や立ち上がりの違いとして聴き取れるかを確認する。
違いが聴き取れる場合に、Boostedとして別バリエーションを用意する。 違いが小さい場合は、Boostedを作らず、標準収録のみを商品として残す。
この順序を踏むのは、ブースターを使った収録を「特別な機能」として 売るためではない。標準収録という基準があるからこそ、 Boostedという追加収録が比較可能な形で成立する、という考え方による。
CSLで記録する意味
CSLが残したいのは、ブースターを通せば必ず良くなるという話ではない。
何も挟まない状態をまず基準として記録し、その基準に対して ブースターがどう作用したかを、条件をそろえたうえで別に記録する。 これがCSLにとってのBoostedプロファイルの位置づけである。
ブースターの有無は、好みの問題でもある。だからこそ、 どちらが正しいと決めるのではなく、両方を条件をそろえて 記録しておくことに意味がある。
まとめ
ブースターは、アンプの音を作る装置ではなく、アンプに入る前の 信号を変える装置である。
CSLでは、何も挟まない標準収録を基準とし、ブースターを使った Boostedプロファイルはその上に追加するバリエーションとして扱う。
すべてのアンプにBoostedを用意するわけではない。 ブースターによる差が記録に値するかどうかを、アンプごとに確認したうえで、 収録するかどうかを判断している。
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