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Gamechanger Audioは、音ではなく演奏を発明したのか。現象・制御・操作の三層で九年分を並べ直す

2026-08-31

雷、モーター、光。Gamechanger Audioは「珍しい物理現象を持ち込む会社」として紹介されることが多い。だがその括り方では、製品どうしの差が消える。現象そのものと、それを音楽の時間へ乗せる制御と、演奏者の身体が触れる操作面。この三つに分けて九年分を並べ直すと、最も過激な現象を持つ製品が最も保守的な操作をしていて、地味に見える製品のほうが新しい動作を要求していたことが見えてくる。

雷を歪みに使う。モーターの回転を音程にする。バネの振動を光で読む。

Gamechanger Audioという会社は、だいたいこの調子で紹介される。珍しい物理現象を、次から次へと楽器へ持ち込む会社。説明はたいていそこで終わる。

だが、この紹介の仕方だと、全部が同じ一言に収まってしまう。

放電も、回転も、光学読み取りも、たしかに珍しい。だが珍しさで括ると、演奏者から見て何が変わったのかが見えない。「珍しい現象を使った」ことと、「演奏者にとって新しい行為が生まれた」ことは、別のことである。前者は仕様書に書ける。後者は、実際に足と手が何をするかで決まる。

この会社の製品を並べると、その二つがきれいに一致していない。最も過激な現象を持つ製品が、最も保守的な操作をしている。逆に、地味に見える製品のほうが、演奏者に新しい動作を要求している。

九年分を、その観点で並べ直したい。

三つの層に分けて見る

分け方を先に決めておく。

現象。制御。操作。

現象は、音を作っている物理そのものである。放電。回転。バネと光。弦の張力。

制御は、その現象を音楽の時間へ乗せる層である。回転数を音程に合わせる仕組み。入力のピッチを追う演算。バネへ送る量の調整。ここが無ければ、現象はただの騒音のままで終わる。

操作は、演奏者の身体が触れる面である。ペダル。ノブ。鍵盤。あるいは、演奏そのもの。

「新しい演奏行為が生まれたか」は、三つ目の層でしか決まらない。ここを分けずに語ると、この会社の製品はすべて「奇抜」の一語で潰れてしまう。

以下、事実関係は同社の公式資料(社史ページと各製品ページ)による。評価と分類はこの記事の側の判断であり、そう分かるように書く。

最初の製品は、いちばん古い企画ではなかった

創業の経緯には、あとで効いてくるねじれがある。

公式の社史によれば、2015年、ロンドンでの三年間の音楽の勉強を終えたギタリストIlja Kruminsが、音楽テクノロジーの会社を作るつもりでリガへ戻る。そして最初の半年を、ある企画に費やしている。

自動で動くBIGSBYトレモロアーム、である。

これは形にならなかった。その過程でIljaは、地元のロカビリー・シーンにいたKristaps KalvaとMartins Melkisに出会う。二人の本業は電子工学と技術だった。パブで話し合われたのは、アームではなく別のアイデアだった。

ピアノのサステインペダルに似た形をしていて、ギターとベースに同じサステインとソステヌートの効果を与えるもの。名前はPLUS。公式資料は、トリオで演奏する人間なら誰でも知っている「線と線のあいだを埋める苦労」を出発点として挙げ、ディレイとリバーブでできることには限界がある、と説明している。

機構と外観の設計には、地元の造形家であり機械技術者でもあるFricis Kalvelisが加わった。開発は平日の夜と週末に進み、最初の二台が演奏可能なファームウェアとともに完成したのは15か月後、2016年11月である。

会社がリガで正式に登記されたのは、その翌月だった。つまり、この会社は製品が動いてから登記されている。

ピアノの文法を借りると、新しい行為が教えられる

PLUS Pedalは、この会社の製品のなかで最も地味な現象を使っている。

放電もしないし、回りもしない。やっていることは、鳴っている音を捕まえて保持し、層として重ねることである。

だが操作の層で見ると、これがいちばん踏み込んでいる。

普通のエフェクターのフットスイッチは、オンとオフを切り替える。PLUSの真鍮ペダルは切り替えない。踏んだ瞬間に、いま鳴っている音を捕まえる。踏み込む深さで、捕まえた層の音量が変わる。

これは、エフェクターの文法ではない。ピアノの文法である。

ここが巧い。まったく新しい行為を発明すると、演奏者はそれを覚えるところから始めなければならない。だがピアノのダンパーペダルという既存の文法を借りれば、行為そのものは新しいのに、学習は要らない。踏めば伸びる。離せば止まる。すでに知っている。

現行のPLUS Pedal IIは、この方向をさらに進めている。公式説明によれば、音を捕らえて重ねる部分がスペクトル解析による新しいエンジンに置き換わり、層の数を1から10、あるいは無限まで選べるLAYERSノブが付いた。Auto Catchに切り替えると、ペダルに足を乗せたまま弾くだけで新しい音が自動的に層になる。ピアノでサステインペダルを踏みっぱなしにするのと同じ状態である。

XLR入力とマイクプリアンプが本体に入り、外部エフェクトをPLUSの前・後ろ・内側(ウェット信号だけ)へ切り替えて挿せるループも付いた。フットスイッチにはWET ONLY、LATCH、HIDEという三つのモードがある。HIDEは、ペダルを踏んだ瞬間にドライ信号を隠す機能で、客席には元の音が聞こえず、生成された層だけが届く。

演奏行為の発明という観点では、PLUSは九年分のなかで最も成功した製品だと考える。これは評価であって、事実の報告ではない。

最も過激な現象は、最も保守的な操作へ渡された

PLASMA Pedalは、この会社の名を広めた製品である。

発端は、2017年夏のアメリカ出張だった。Third Man Recordsを見学し、オハイオ州アクロンのEarthQuaker Devicesを訪ね、ケンタッキー州バックホーンにあるブルーグラスの録音スタジオの玄関先で、電撃殺虫器を見た。公式社史は、そこから何杯か飲んだあとにアイデアが生まれた、と書いている。

同年9月、MartinsとKristapsが高電圧アナログ歪み回路の開発を始める。参照されたのはニコラ・テスラの共振変圧器回路である。入力信号をおよそ3,500ボルトまで昇圧し、キセノンを封入したガス放電管の中で電気アークへ変換する。前面パネルに見える青い光は、そのアークそのものである。

翌2018年1月のNAMMで公開され、3月にIndieGoGoで先行予約が始まり、約1,500件が集まった。出荷は同年秋である。

ここで見落とされやすいのが、操作の層である。

3,500ボルトの放電を積んだこの機材が、演奏者に要求する動作は何か。ノブを回すことだけである。踏む。回す。それだけで、通常のディストーションと同じ運用に収まる。

つまりPLASMAは、現象の層では極端に新しく、操作の層では完全に既存である。

これを手抜きと読むこともできるが、この記事はそう読まない。放電という制御しにくい現象を、既存のペダルの語彙へ押し込んで安定させたこと自体が、この製品の設計上の達成だと考える。演奏者が向き合う面を保守的に保つのは、そのための判断である。

先行予約の期間中に用意されたPLASMA Robotという仕掛けも、同じ性格を持っている。プロトタイプを合板の筐体に取り付け、五つのステッピングモーターをゴムベルトでノブへつなぎ、ブラウザからの操作で物理的にノブを回す。利用者は自分の音声をアップロードし、YouTubeのライブ配信で処理された音を聴き、処理済みの素材をダウンロードできた。一年以上動き続け、同時に放電管の耐久試験にもなっていた。

自社の製品を「遠隔で踏ませる」ための装置を作る。これは宣伝の工夫であると同時に、聴かせることを工学の問題として扱った例である。

PLASMAの回路はその後、ギターの外へ広がっている。2019年にはEurorackモジュールのPLASMA DRIVE(同じラトビアのErica Synthsとの協業)、2020年からはラックマウント版のPLASMA Rack。ラック版は、Rammsteinのリヒャルト・Z・クルスペからの要望がきっかけだったと公式社史は記録している。ジャック・ホワイトとThird Man Recordsとの協業によるPLASMA Coilは、同社初のシグネチャー製品である。

さらにPLASMA Voiceでは、性格が変わっている。

これはEurorackのモジュールで、二つの電極間の放電を整流回路で音声へ変換する。放電を駆動するのは超音波帯のパルス幅発振器である。公式説明が明言しているとおり、それまでのPLASMA製品は歪み装置として設計され、放電が安定するように各パラメーターは最適な位置へ固定されていた。PLASMA Voiceは、その駆動側を積極的に変調することで、外部の音源を必要としない独立した音源になっている。

歪みから、音源へ。現象は同じでも、層の構成が違う。

制御層が足りないと、六年かかる

MOTORの系譜は、この会社で唯一、明確につまずいた企画である。だからいちばん面白い。

2018年、実験は電磁ピックアップをさまざまなモーターに当てて増幅するところから始まった。ドローンや共鳴音や軋み音は出た。だが公式社史は、そこですぐに核心を書いている。モーターを楽器にするために不可欠なのは、回転数を音楽的な精度でリアルタイムに制御できるドライバー系だ、と。

現象ではなく、制御が壁だった。

そのために電動機の専門家Valtersが採用され、ホールセンサーではなく赤外線の光学ディスクで回転数を測定・制御する独自のマイクロコントローラー系が作られている。MIDIでブラシレスDCモーターを鳴らす試験基板が、それなりの精度で動いた。

そこから二つの企画が生まれた。MOTOR PianoとMOTOR Pedalである。

MOTOR Pianoは、36個のブラシレスモーターを音源とし、1音につき3モーターで12音ポリフォニー、アフタータッチ付きのフルサイズ鍵盤、そして機械式LFOとして働く低周波ステッピングモーターを備えた電気機械式の楽器だった。

2019年のNAMMに間に合わなかった。

このときの対応が、この会社らしい。完成品を持っていく代わりに技術者全員分の航空券を買い足し、来場者の前で開発を続けた。結果として取材は集まったが、製品は出ていない。

会期中と会期後、MoogのエンジニアリングチームがGCAに助言を与えている。公式社史は、この会話がきっかけで企画全体を作り直し、より小さく、より複雑でなく、より手の届く製品にする方向へ舵を切ったと書いている。

その結論がMOTOR Synthである。

現行のMKIIは、八個の専用ブラシレスDCモーターを発振器にしている。各モーターの軸には反射面を持つ光学ディスクが付いていて、サイン、ノコギリ、矩形の三つの波形が円周上のトラックとして刻まれている。トラックごとに赤外線レーザーとセンサーが対になっていて、回転で変わる反射率がそのまま波形として出力される。加えて、回転するコイルの脇に置かれた電磁ピックアップから、Mと呼ばれる誘導波形が取り出せる。

モーター音声が二系統、デジタル音声(DCO)が一系統。アナログのマルチモードフィルター、ARP、シーケンサー、MOTION REC、MIDIとCV。入力信号に対してはボコーダーやサイドチェインとして働く。

公式ページによれば、James BlakeはアルバムBad Cameoの中心的な音源としてこれを使い、Tom HolkenborgはFuriosaやJustice League、Godzilla vs Kongのスコアで使っている。

だが、操作の層で見ると、MOTOR Synthは鍵盤とMIDIである。発明は発振器の側にあって、演奏行為の側にはない。

演奏行為が現れたのは、最初の企画から数えてずっとあとに出たMOTOR Pedalのほうである。

このペダルはリアルタイムのピッチ追従器で入力の基音を解析し、モーターの回転速度をその周波数へ合わせる。公式ページは具体的な数字を出していて、440Hzに合わせるならモーターは毎秒146回転する。回転するコイルの動きは、調整された誘導子で音声信号として取り出される。

エンジンは五つある。コイルの電磁的な拾い出しそのもののMOTOR。デジタル波形との相互変調によるMXD。モーター出力にピッチを固定して同期させたデジタル発振器のM-WAVE。DC電圧で回す代わりに交流をコイルへ注入して共振と金属的な唸りを作るCOIL MODE。モーター出力を搬送波、演奏信号を変調波とする24バンドのVOCODER MODE。

そして操作の層に、この会社が久しぶりに新しい動詞を持ち込んでいる。

ペダルの名前がアクセルなのである。踏み込めばピッチが上がり、床まで踏めば回転が振り切れる。ブレーキは下向きのピッチシフトで、踏み切ればモーターは停止する。クラッチはピッチ追従器からモーターを切り離す機能で、これを使うとドローンになる。ほかにボリュームとDRIFTがある。

PLUSがピアノの文法を借りたのと同じ構造である。今度は自動車の文法を借りている。アクセル、ブレーキ、クラッチという語彙は、演奏者が説明書を読む前から意味が分かる。

MOTORという企画は、現象を見つけてから演奏行為へ届くまでに、長い時間を必要とした。制御層に専門家を一人雇い、鍵盤という既存の操作面をいったん経由し、そのあとでようやく足元の動詞にたどり着いている。

古い機構を、読み出し方で作り替える

LIGHT Pedalの由来は、社内の人材配置の話として記録されている。

2018年に加わったTeodors Kerimovsは、当時リガ工科大学の電子工学科の二年生だった。大学は事務所から数百メートルの距離にある。与えられた指示は、来られるときに来て、好きなことをして、ただし新しくオリジナルなものを作ること、というものだったと公式社史は書いている。

2019年夏に始まった彼の実験が、光学式スプリングリバーブへつながる。2020年のNAMMで発表され、MusicRadarのBest of NAMMを受けた。同年2月にReverbで先行予約が始まり、1,000件を超えた。量産出荷は2021年の2月から3月である。

構造は、従来型との差が明快である。

通常のスプリングリバーブは、バネの端にトランスデューサーを一つ置いて、届いた振動を受け取る。LIGHT Pedalは実際のスプリング・タンクを積んだうえで、バネの長さ方向の複数箇所に赤外線の光学センサー対を並べ、光電式のピックアップとして使う。

読み出し点が一つから複数になると、機構は単なる残響装置ではなくなる。Optics、Sweep、Tremという光学側のエフェクトと、Reflect、Feedback、Harmonicという機械側のエフェクトは、この構成があって初めて成り立つ。Driveはタンクへ送るウェットの量で、Toneはウェット信号だけに効くティルトEQである。

同社は「世界初のアナログ光学式スプリングリバーブ・システム」と書いているが、先行する非接触振動検出との関係が示されていないため、ここではメーカーの主張として扱う。

なお、この技術はまだ開発の途中にある。公式サイトの助成事業の記載によれば、光学的な発振子とセンサーによってバネの振動を励起し読み出す方法の研究が、2025年の期間にも実施されている。読み出しだけでなく、励起の側も光でやろうとしている、ということである。

「薄まった時期」に見えるものは、いちばん古い宿題だった

BIGSBY Pedalは、この会社の路線が丸くなった証拠として語られやすい。他社の既存機構を模したもので、しかもFenderとの協業である。新しい物理現象は使われていない。

だが公式社史を読むと、順序が逆である。

BIGSBYをペダルにするというアイデアは、PLUS Pedalの開発が終わるより前に完成していた。実行できなかった理由として挙げられているのは技術ではなく、Fenderのような大企業へどう話を持っていけばよいか分からなかったから、である。

転機は2019年夏、ナッシュビルのサマーNAMMだった。PLASMA Coilを発表した直後で、いわゆる箔が付いたと判断し、Fenderの役員数名に構想を説明して承認を得ている。

そして冒頭の話に戻る。Iljaがリガへ戻って最初の半年を費やしたのは、自動で動くBIGSBYトレモロアームだった。

つまりBIGSBY Pedalは、この会社で最も新しい妥協ではなく、最も古い宿題である。

技術的な中身も軽くない。2019年8月に加わったKārlis Ķimsisが、リアルタイム多声ピッチシフトのアルゴリズムをゼロから書いている。使われたのは、商用出荷前に入手したSHARCプロセッサーである。最初の「演奏可能な」アルゴリズムができるまでに約半年、そこからさらに一年半の作り込みを経て、2021年6月に先行予約、11月に最初の500台が出荷された。

筐体は、鋳造アルミの外装に沈み込んだローラーノブ、そしてバネ仕掛けの焼き入れ鋼のフットペダルが、再現されたBIGSBYテールピースへ取り付けられている。

操作の層で見ると、これは既存の演奏行為を移設した製品である。アームによるビブラートという動作を、手から足へ移し、単音から和音へ広げ、アームの付いていないギターでも使えるようにした。

新しい現象は無い。だが新しい行為はある。アームを持たないギターで和音全体を揺らす、という動作は、それまで存在しなかった。

操作子を消す方向の発明

近作のAUTO Seriesは、また別の方向を向いている。

ディレイ、リバーブ、コーラス。効果そのものは古典的である。新しいのは、パラメーターを誰が動かすか、という一点にある。

各ペダルは演奏から二種類の自動化信号を作る。DYNAMICSエンジンは音量とピッキングの強さと演奏全体の起伏を監視し、PITCHエンジンは音程を見る。この二つが、効果のパラメーターをリアルタイムで動かす。

つまりAUTO Seriesの操作子は、演奏そのものである。足で踏む対象も、回すべきノブも、演奏中には増えていない。むしろ減っている。

これは、PLUSやMOTOR Pedalとは逆向きの設計だと考える。あちらは新しい動詞を足した。こちらは動詞を消し、演奏の起伏をそのまま制御信号として使っている。

そして2025年末に限定で出たRECODERは、その先にある。

同社の説明によれば、出発点は「二台として同じ音がしないエフェクターを作れるか」という課題だった。演奏者が任意のフレーズや音を内部メモリーへ録音すると、RECODERはそれをループとして再生しない。録音された信号のスペクトル解析を行い、そこから動的な処理テンプレートを作って、演奏中の音へ実時間で適用する。分類は「Spectral Morphing Workstation」とされている。

同社自身が、あなたのRECODERがどう鳴るかは我々にも分からない、と書いている。

これがコンセプトの強度に留まるのか、演奏行為として成立するのかは、この記事では判定しない。判定には実機で長く使った観察が要る。ここでは開かれた論点として置いておく。

先行予約は、遊べるより先に売れることを要求する

九年分を並べると、構造的な条件が一つ浮かぶ。

この会社は、投資家を入れず、大きな借入もせずに独立を保ってきたと公式に述べている。それを可能にしたのが、PLUSに始まる先行予約とクラウドファンディングだった。

独立は良いことである。だが、代償がある。

先行予約で資金を作るということは、製品がまだ演奏できない段階で、それを一文で説明して売らなければならない、ということである。雷で歪ませる。モーターで発振する。バネを光で読む。どれも一文で通る。強い。

そして製品はNAMMに間に合わせる必要がある。2017年PLUS、2018年PLASMA、2020年LIGHT、2021年BIGSBY。ほぼ毎年、新しい原理の製品が一つ出ている。

つまりこの会社の設計思想は、資金調達の形式と展示会の周期に、かなり強く形を与えられている。

そう見ると、うまくいった製品とそうでない製品の分かれ目も、見え方が変わる。コンセプトの強度に留まりやすいのは、発想が弱いからではない。売る文と遊べる状態のあいだの距離が、製品ごとに違うからである。

距離が短かったのがPLASMAである。歪みは、ノブの操作で成立する。

距離が長かったのがMOTORである。回転を音楽の時間へ乗せるには専門の技術者が要り、鍵盤という中継地点を経由し、足元の動詞にたどり着くまでに年単位の時間がかかった。間に合わなかった年があるのは当然だった、とも言える。

BIGSBYも距離が長い。だがこちらは、演奏行為のほうが先に存在していた。だからアルゴリズムさえ書ければ着地した。

一文で売れることと、手が覚えることは、別の速度で進む。この会社の歴史は、その二つの速度差の記録として読める。これはこの記事の解釈であり、同社の説明ではない。

記録として残すべきなのは、どの層か

メーカー史は、たいてい現象の一覧として書かれる。放電、モーター、光。年表にすると読みやすいし、覚えやすい。

だが、そこで落ちるのが制御の層である。

ホールセンサーではなく光学ディスクで回転数を測る、という判断。商用出荷前のプロセッサーを確保して多声ピッチシフトを書く、という判断。バネの読み出し点を一つから複数へ増やす、という判断。

技術者の年月は、ほぼここに費やされている。そして製品が演奏行為へ届くかどうかも、ここで決まっている。

機材を記録するとき、名前が付いているのは現象のほうである。「プラズマ歪み」「光学スプリング」。だが同じ現象を使っても、制御と操作が違えば別の機材になる。PLASMAの歪みとPLASMA Voiceの音源が、同じ放電管で別物になっているとおりである。

現象の名前だけを残すと、その差は消える。残すべきは、その現象がどういう条件のもとで言うことを聞くようにされたか、のほうである。

まとめ

Gamechanger Audioの九年を、三つの層で並べ直した。

現象の層では、放電も回転も光学読み取りも新しい。だがそれは、この会社の製品を互いに区別しない。

制御の層に、実際の工学がある。光学ディスクによる回転数制御。SHARC上の多声ピッチシフト。複数点からのバネ読み出し。スペクトル解析。

操作の層で見ると、評価は入れ替わる。最も過激な現象を持つPLASMAは、ノブを回すだけの機材である。地味な原理のPLUSは、ピアノのペダルという既存の文法を借りて、ギターに新しい動作を持ち込んだ。MOTOR Pedalは自動車の語彙を借りて同じことをした。BIGSBY Pedalは新しい現象を一つも使わずに、和音を足で揺らすという行為を作った。AUTO Seriesは逆に、操作子を消して演奏そのものを制御信号にした。

「音ではなく演奏を発明したのか」という問いに、この記事は一つの答えを出さない。製品ごとに答えが違うからである。

ただ、傾向は言える。新しい行為が生まれた製品はいずれも、まったく未知の動作を要求していない。ピアノのペダル、自動車のアクセル、ビブラートアーム。すでに身体が知っている文法を借りて、その先に新しいことをさせている。

機材を選ぶとき、目に入るのは現象の名前である。だが手と足が覚えるのは、操作のほうである。カタログで驚いた機材が一年後に棚で眠り、地味だと思った機材が毎日足元にある、ということが起きるのは、たぶんこの二つの層が別物だからだ。


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