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ピックアップの静けさは、回路でも、磁石でも、材料でも作れる

2026-10-06

アクティブ・ピックアップは、内蔵のプリアンプで増幅するから静かだ、とよく説明される。だがEMG自身が、単純なプリアンプを足すだけではピックアップの拾ったハムも一緒に増幅される、と書いている。静けさはプリアンプの有無では決まらない。従来のピックアップは、数千回巻いた1本の銅線に、出力も共振もノイズも背負わせていた。EMGは電子回路と伝送の区間を、Lace Sensorは磁界の形を、Alumitoneは導体そのものを、Fishman Fluenceは拾う工程と音を作る工程の分け方を、それぞれ作り直した。4つの答えを並べ、静けさと引き換えに何を手放したのかまで読む。

アクティブ・ピックアップは静かだ、と言われる。

理由もよく一緒に語られる。弱い信号を、ピックアップの中のプリアンプで増幅しているから。

半分は合っている。だが、この説明をいちばん強く否定しているのは、アクティブ・ピックアップの代名詞のような会社である。

EMGの公式FAQは、ピックアップを「アクティブにする」方法はいろいろあると書いたうえで、こう続けている。単純なバッファー・プリアンプでもアクティブにはなる。ただし、そのプリアンプはピックアップが拾ったハムやバズも一緒に増幅する。アクティブだからといって、良い結果が保証されるわけではない。

プリアンプは、すでに入ってしまったノイズを消さない。

では、静かなピックアップは、どこで静かになっているのか。

EMG、Lace Sensor、Lace Alumitone、Fishman Fluence。この4つを並べると、答えは1つではない。同じ問題に対して、作り直した場所がそれぞれ違う。

普通のピックアップは、1本の銅線にすべてを背負わせている

先に、何が問題だったのかを確認しておく。

伝統的なマグネティック・ピックアップは、磁石の周りに細い銅線を何千回も巻いたコイルである。FishmanがFluenceの基礎として出願した特許は、従来型のコイルの例として3000から8000ターンという数字を挙げている。

巻けば巻くほど、出力は上がる。

だが同じ特許は、出力のために巻数を増やすと共振のピークが低い周波数へ下がる、とも書いている。出力を取れば、高域の伸びを手放す。

ノイズも同じ線で決まる。

コイルは弦の振動を拾うためのものだが、電灯の配線や照明の調光器が出す交流の磁界も、同じように拾う。巻数を増やして感度を上げれば、ハムへの感度も上がる。

ハムを打ち消す古典的な答えは、巻き方向と磁極を逆にしたコイルを2つ組み合わせるハムバッカーである。ただし特許は、高インダクタンスのコイルを縦に2つ積むような方法でハムを減らすと、可聴帯域の高域が減衰し、ピックアップの持ち味を失うことがある、と指摘する。

さらに特許は、もう1つの問題を挙げている。何千回も細い線を巻く工程では、被膜の厚さや巻くときの張力がばらつく。線が伸びれば抵抗と容量が変わる。結果として、1本ごとに共振周波数が違い、音が違うピックアップができる。

出力。

共振。

高域。

ハム。

個体差。

伝統的なコイルは、これを全部、1本の銅線の巻数と巻き方で同時に決めている。どれか1つを動かせば、ほかも動く。

加えて、この出力は高インピーダンスである。ギターのジャックからアンプまでのケーブルは、その高インピーダンスの信号を運ぶ区間であり、ケーブルの容量がピックアップの共振と組み合わさって高域を削り、途中で混入するノイズにも弱い。ここはピックアップ単体ではなく、ピックアップとケーブルとアンプ入力をまとめた系の性質である。

静かなピックアップを作るとは、この絡み合った制約のどこかを、ほどくことである。

EMGは、ノイズに弱い区間を短くした

EMGの創業者Rob Turnerは、電子工作に囲まれて育った人である。父親がアマチュア無線の商売をしていた。

創業40周年のインタビューで、Turnerは1976年の始まりをこう振り返っている。最初はマイクロフォンの事業を考えたが、参入の費用が高すぎた。そこで、手を入れる余地の大きいギターのピックアップを選んだ。そして、ローインピーダンスこそ進むべき道だと分かっていた。Les Paul自身が何度もそう言っていた、と。

EMGが最初に目指したのは、メタルの音ではない。

Turnerによれば、EMGはもともとスタジオの仕事のために設計された。静かで、クリーンで、澄んだ音。この標語を何年も掲げ、ハリウッド、ニューヨーク、ナッシュヴィルのスタジオ・ミュージシャンの間で地位を築いた。そのあとで、本人の言葉では「ヘヴィメタルにさらわれた」。

では、EMGは何を作り直したのか。

公式FAQの説明は具体的である。プリアンプをピックアップの外ではなく、ピックアップのケースの中に置く。コイルの接続部もプリアンプもシールドする。そしてピックアップから出るケーブルは、すでにローインピーダンスの信号を運ぶ。だからノイズを拾いにくい。

ここで効いているのは、増幅したことそのものではない。

高インピーダンスの信号が裸で走る区間を、ピックアップのケースの中だけに縮めたことである。ノイズに弱い区間が短ければ、拾う量も減る。そのうえで、ケーブルやワイヤレスへはローインピーダンスで送り出す。FAQは、長いケーブルを使っても、ワイヤレスを使っても、毎回同じ音になると書く。会場の照明を調光したときにギターがずっとブーンと鳴る、という状況がなくなることを、最大の利点に挙げている。

内蔵プリアンプの出力レベルは工場で固定されていて、ユーザーは変えられない。EMGはその値を、ハムとノイズを最小にしつつ、強いピッキングや鋭いアタックでもクリーンな出力を保てるところに決めた、と説明する。

つまりEMGの静けさは、コイルと電子回路と伝送路を、最初から1つの部品として設計した結果である。

この設計は、後付けの方式とは区別されている。FAQは、普通の高インピーダンス・ピックアップの出力をバッファーやアクティブEQへ送る「アクティブ」システムに触れ、電池が切れてもバイパスすれば音は出せるが、それはピックアップ設計の妥協であり、最適化されたアクティブ・ピックアップの利点の一部しか得られない、と書く。

これはメーカーの立場からの説明である。パッシブ・ピックアップの直後にバッファーを置けば、ケーブルをローインピーダンスで駆動する利点は得られる。EMGが「妥協」と呼ぶのは、ピックアップ自体を電子回路の前提で設計する自由を、後付けでは持てないという意味だと読める。

EMGが静けさと引き換えにしたもの

EMGの設計は、いくつかのものを手放している。

1つ目は電池である。FAQは、EMGは最初からアクティブとして動くように設計されているので、電源がないとまともに機能しないと率直に書く。電池が弱ると出力が下がり、歪み始め、ある電圧を下回ると、ほとんど音が出なくなる。消費電流はピックアップ1個あたり約80マイクロアンペアと小さく、ジャックにプラグを挿していないときは電池が切り離される。それでも、電池を忘れれば楽器が鳴らない構造であることは変わらない。

外部電源も推奨していない。理由が面白い。ピックアップは信号系のいちばん最初の段なので、ノイズに特に敏感だからだという。電池と同等の性能を出すには、極めて質の高い電源フィルタリングが要る。静けさを最優先にした設計が、電源の選び方まで縛っている。

2つ目は配線の自由である。EMGのアクティブ・ピックアップは、個々のコイルの出力に触れられない構造になっている。だから、伝統的なやり方でコイル・タップや位相切り替えを配線することができない。EMGは代わりに、シングルコイルの音に寄せるフィルターや、ハムバッカーとシングルコイルを1つのケースに収めたモデルを用意している。FAQは、それらの方がローノイズを保てる、普通にコイルを分割したピックアップはハムバッカーのモードよりずっとバズが多くなるから、と説明している。

3つ目は、ギター側の回路の作法である。EMGはボリュームとトーンに25Kのポットを使う。パッシブ用の250Kや500Kとは桁が違う。そのかわりFAQは、ローインピーダンスのEMGでは、ボリュームを絞っても音色への影響がほとんどなく、こもらないと書く。パッシブ・ピックアップとの混載は、そのままでは相性が悪い。

静けさは、タダでは手に入っていない。EMGは、電池と配線の自由を差し出して、ノイズに弱い区間を消した。

Lace Sensorは、磁界の形を作り直した

Lace Sensorは、まったく別の層で問題を解いた。

こちらはパッシブである。電池を使わない。そしてハムバッカーでもない。Lace Sensorは本物のシングルコイルでありながら、中身が伝統的なシングルコイルとは違う。AGI(Actodyne General International)が1985年から製造し、Fenderが自社のギターに採用した。

基になった特許の題名は、ピックアップにおける磁界の整形、である。発明者はDonald A. Lace, Jr.。特許はその目的の1つに、ピックアップの周囲にシールドとなる磁界を作ることを挙げている。

Laceの製品ページは、これをもう少し噛み砕いて説明する。普通のピックアップは6つの磁極で弦の振動を読む。Lace Sensorは36の独立した磁気の「感知域」を作り、それが弦と接する場所で振動を読む。

そして、コイルと磁石を囲むRadiant Field Barriersという金属の仕切りがある。Laceによれば、その役割の1つは、Sensorを外部のノイズと60ヘルツのハムから遮ることである。伝統的なボビンも、Lace Micro Combsという特許部品に置き換えられている。

EMGが、拾ってしまったノイズを短い区間で封じ込めたのに対して、Lace Sensorは、そもそもコイルに届く磁界の形を変えようとした。電子回路ではなく、磁気回路とシールドの層で静けさを作っている。

この違いは、ハムバッカー版で分かりやすく出る。Lace Sensorを2つ組み合わせたDuallyは、2つのコイルの出力が揃っていなくてもハムバッカーとして使える。通常のハムバッカーは、ハムを打ち消すために出力の等しいコイルを2つ必要とする。Duallyがそれを要しないのは、どちらのコイルも単体ですでにノイズが少ないからだ、と説明されている。

打ち消すのではなく、最初から拾わないようにする。

ただし、ここで言う静けさはメーカーの説明である。どれだけ静かなのかを、ほかの方式と同じ条件で測った値は、メーカーの資料には並んでいない。

Alumitoneは、銅線そのものを減らした

Laceはもう1つ、さらに大胆な答えを出している。Alumitoneである。

製品ページは、これを従来のピックアップ設計からの根本的な離脱と呼ぶ。銅ではなく、アルミニウムを基にしている。結果として、抵抗が低く、出力が高く、従来の「電圧駆動」のピックアップに対して「電流駆動」の設計になる、という。

構造の説明も短い。ウォータージェットで切り出したアルミニウムの外骨格に、細い銅線を90パーセント減らしたマイクロ巻線を組み合わせる。そうして、ローインピーダンスでありながらハイインピーダンスとしても振る舞うピックアップができる、とLaceは書いている。

伝統的なコイルの問題を思い出すと、この答えの位置がはっきりする。

従来型は、出力を稼ぐために細い銅線を何千回も巻き、その巻数が共振もノイズも個体差も決めていた。Alumitoneは、その「何千回も巻いた細い銅線」そのものを、大幅に減らす方向へ動いた。電子回路を足すのでも、磁界を整形するのでもなく、信号を作る導体の構成を入れ替えた。

アルミの外骨格と少ない巻線が、回路としてどうつながって「電流駆動」になるのか。この記事は、そこをLace自身の言葉の範囲で読む。確かなのは、Laceが銅線の巻数という伝統的な前提そのものを手放した、ということである。

Fluenceは、拾う工程と音を作る工程を分けた

4つ目のFishman Fluenceは、問題の立て方そのものが違う。

Fluenceの基になった特許の題名は、電気的なピックアップに低インダクタンスのコイルを使う方法と装置、である。発明者はLawrence FishmanとJohn Eck。

特許は、先に見た伝統的コイルの問題を、ほぼそのまま出発点にしている。何千回も巻く工程のばらつきが、1本ごとに違う共振と違う音を生む。ハムを減らすために高インダクタンスのコイルを積めば、高域を失う。巻数を増やせば、共振のピークが下がる。

そこで特許の実施例は、巻数を3000ターン未満、例えば1600や1000ターンに抑えた低インダクタンスのコイルを使う。コイルは巻線でもよいし、プリントしたコイルでもよい。そしてこのコイルに、人間の可聴帯域、20ヘルツから20キロヘルツにわたって平坦な周波数特性を持たせる。

平坦にしておけば、その後段でデジタルやアナログの処理によって、ほかのピックアップの音を再現することも、まったく新しい音を作ることもできる。

もちろん代償はある。特許自身が、低インダクタンスのコイルは一般的なピックアップに比べて出力が低い、と書いている。そこで後段のゲインで、伝統的なピックアップと同じレベルまで持ち上げる。

Fishmanの製品ページは、この特許設計を「Fluence Core」と呼び、Fluenceを生んだ技術的な火種だと位置づける。そのうえで、音楽的に補い合う複数のボイスを切り替えられること、ノイズのない動作、ローインピーダンスの信号をうたっている。

EMGと並べると、違いがよく見える。

EMGも、コイルの直後に電子回路を置いた。だがEMGの電子回路は、主にノイズに弱い区間を短くし、信号を安全に送り出すためにある。音の性格は、コイルと磁石を含めたピックアップ全体で作られている。

Fluenceは、コイルにはあえて音の性格を持たせない。コイルは平坦に拾うことに徹し、音の性格はフィルターが作る。伝統的なピックアップでは1本の銅線が同時に担っていた「拾う」と「鳴らす」を、2つの工程に分けた。

Fluenceのコアが実際にどう作られているかは、FishmanというメーカーをAura、Fluence、TriplePlayの3つの製品から読んだ別の記事で詳しく扱った。ここで押さえておきたいのは、特許の考え方である。特許の実施例は「〜してもよい」という書き方で幅を持たせてあり、特定の製品の実装をそのまま書いたものではない。

4つの答えを並べる

ここまでを、作り直した場所で並べ直す。

EMGは、電子回路と伝送の層を作り直した。コイル、シールド、プリアンプを1つのケースに封じ、ノイズに弱い高インピーダンスの区間を短くした。

Lace Sensorは、磁界の層を作り直した。磁界の形とシールドで、そもそもコイルにハムが届きにくい構造にした。電池は使わない。

Alumitoneは、導体の層を作り直した。細い銅線を何千回も巻くという前提を、アルミの外骨格と少ない巻線に置き換えた。

Fluenceは、工程の分け方を作り直した。平坦に拾うセンサーと、音を作るフィルターを分業させた。

4つの答えが向き合った相手は同じである。1本の銅線の巻数が、出力も、共振も、高域も、ハムへの感度も、個体差も、一度に決めてしまうという制約。

ここからはこの記事の見立てになる。アクティブかパッシブかという分類は、この比較ではあまり役に立たない。電池を使うEMGとFluenceは、解いた場所がまったく違う。電池を使わないLace SensorとAlumitoneも、やはり違う。どの層を作り直したか、という分け方の方が、それぞれの製品が何を得て何を手放したかをよく説明する。

静けさの出どころを訊く

もう1つ、並べたときに見えてくることがある。

どの答えも、静けさをタダでは手に入れていない。

EMGは、電池と配線の自由を差し出した。Fluenceは、低い出力をゲインで補う必要を引き受けた。LaceのSensorは、伝統的なボビンと磁極という部品の作法を捨てた。Alumitoneは、銅線を巻くという、ピックアップの最も古い前提を捨てた。

そして、どの方式も万能ではない。プリアンプは、入力の前に拾ってしまったハムを消せない。プリアンプ自身もノイズを持つ。コイルを分割したシングルコイルのモードは、EMG自身が認めるようにハムバッカーのモードよりうるさい。静けさは、方式の名前ではなく、その方式がどこまでを作り直したかの範囲で決まる。

カタログに並ぶ抵抗値や出力の数字で、この4つを比べたくなるかもしれない。だが各社は、同じ項目を同じ条件で公表していない。何を測った値なのか書かれていない表示もある。違う層を作り直した製品を、同じ1つの数字で並べると、かえって何が違うのかが見えなくなる。

静かなピックアップを選ぶときに訊くべきなのは、アクティブかどうかではない。

その静けさは、どこから来ているのか。

電子回路が守っているのか。磁界が遮っているのか。導体が変わったのか。拾う工程と鳴らす工程が分かれているのか。

答えが分かれば、手放したものも見える。電池の心配か、コイル・タップか、伝統的な巻線の手触りか。どれを差し出してもいいかは弾き手によって違う。だが、何を差し出したのかを知って選んだ静けさなら、それはもう単なる「ノイズが少ない」ではない。その楽器で何をしたいかという判断の一部になる。

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