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前段の辞書と、後段の物理。TriAxisと395 Simul-Classという組み合わせ

2026-06-23

TriAxisは歴代Markの回路を1Uに収めた可変プリアンプとして知られる。だが、その音を最終的に決めるのは後段のパワーアンプだ。TriAxisと395 Simul-Classという組み合わせを、前段と後段の役割分担という一点に絞って整理する。

TriAxisは、歴代Markシリーズの回路を1Uのラックに収めた可変プリアンプである。複数のモードを持ち、設定をMIDIで呼び出せる。Mesaの歴史を一台に圧縮した、よくできた装置だ。

ただ、この記事で見たいのは、TriAxis単体の中身ではない。

TriAxisは、あくまで前段である。プリアンプは、音の「素」を作るが、音そのものを最後まで決めるわけではない。決めるのは、後段のパワーアンプだ。

そして、TriAxisの後段として用意された答えが、395 Simul-Classだった。

ここでは、TriAxisと395という組み合わせを、前段と後段の役割分担という一点に絞って見ていく。

前段だけでは、音は決まらない

プリアンプは、いわば「声の辞書」である。

どんな歪みの傾向を持つか、どの帯域に芯を置くか。そうした音色の方向は、前段で決まる。TriAxisは、その辞書をいくつも内蔵している。

だが、辞書を引いただけでは、声にはならない。

最終的な押し出し、倍音の揺れ方、コンプレッションの掛かり方、アタックの立ち上がり。これらは、パワーアンプがどう動くかで決まる。前段が同じでも、後段が変われば、出てくる音は別物になる。

TriAxisの音を語るとき、後段を抜きにできないのは、このためである。

395 Simul-Classが効かせる「後段の物理」

395 Simul-Classは、Mesa独自の動作方式を持つパワーアンプだ。

Simul-Classは、パワー管の一部をClass A、一部をClass A/Bで同時に走らせる。この合成によって、独特の挙動が生まれる。

中域の柱が太く、強くなる。倍音が揺らぎながらも破綻しない。コンプレッションが滑らかにかかる。アタックの立ち上がりが速い。

これらは、前段のEQやゲインでは作りにくい。電流がどう流れ、出力段がどう飽和するか、という物理の側で起きる現象だからだ。

Mark IIC+の質感が高く評価されてきた理由の多くは、実はこの後段の挙動による。TriAxisのIIC+的なモードが「近い」と言われるのも、395という後段があってのことである。

つまり395は、TriAxisという辞書を、実際に鳴る声へ翻訳する装置だ。

395のモードで、TriAxisは別の顔になる

395 Simul-Classは、動作方式を切り替えられる。そして、これがTriAxisの音を根本から変える。

標準のSimul-Classは、AとA/Bの合成で、音像が最も大きく、中域の密度が自然になる。歴史的なリファレンスにあたる音だ。

Class Aを強調すると、倍音が揺らぎ、音が太く柔らかくなる。古いMarkシリーズに近い有機性が出る。

Class A/Bを強調すると、タイトで反応が速くなる。現代的な直線性のある押し出しになる。

重要なのは、これがEQの違いではないという点だ。電流の流れ方そのものが変わることで生じる、物理的な差である。だからこそ、モデラーでは置き換えにくい領域になる。

前段のモードを固定したまま、後段の動作だけを変えても、TriAxisは別の顔を見せる。「音は前段で決まる」という思い込みが、ここで一度崩れる。

未来へ向く後段、歴史へ戻す後段

TriAxisの純正パワーアンプは、後年2:Ninetyへ移行した。

2:Ninetyは、Deep / Modernという補正回路を持つ。よりタイトで現代的、Rectifier系の方向へ寄った押し出しになる。これを使うと、TriAxisは現代Mesaの音像へ接続される。

一方の395は、補正を持たない。真空管の生の挙動がそのまま出る。Mark IIC+的な中域の粘りが自然で、倍音が濁らず、前段モードの差が素直に出る。

同じTriAxisでも、後段の選び方で行き先が変わる。2:Ninetyは未来へ導く後段、395は歴史へ戻す後段だと言える。互換ではなく、方向性が違う。

ここでも、音の行方を決めているのは後段である。

CSLで、この“組み合わせ”を記録する意味

TriAxisと395は、役割分担が極端にはっきりしている。前段が回路と時代性の切り替えを担い、後段が音の運動、つまり圧縮と解放と押し出しを決める。

だから、記録するときに意味があるのは、前段モードと後段の動作の「組み合わせ」である。

前段モードを動かした差と、後段の動作を動かした差。この二つを切り分けて残しておけば、後から「TriAxisのどこが効いているのか」を聴いて確かめられる。前段だけを録っても、395の後段挙動は再現できない。

これは「本物の完全な再現」という話ではない。395という後段が生産を終えた今、この前段と後段の組み合わせを、鳴っている音として残しておく、という記録である。

まとめ

TriAxisは、歴代Markの声を集めた前段の辞書である。だが、その辞書を実際の音へ翻訳するのは後段だ。

395 Simul-Classは、Simul-Classの物理挙動で、前段の切り替えを押し出しの違いとして出してくれる。2:Ninetyが未来へ、395が歴史へ向く。

TriAxisの音を語るなら、前段だけでなく、どの後段と組ませたかまで含めて見る必要がある。だからこそ、その組み合わせごと、実機の音として残しておく意味がある。


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