Chuuni Sound Lab

#演奏思想

10 本

Andy Summersは、なぜ三人編成を音で埋めなかったのか。和音を短く発音し、時間へ渡すという設計

三人編成のギターは、音を厚くして穴を埋めるのが定石とされてきた。Andy SummersはThe Policeでそれをしなかった。三度を抜き、五度を並べ、九度を足した広いヴォイシングを短く発音し、コンプレッサー、モジュレーション、エコーへ渡して時間の方向へ広げた。弾いていない瞬間にも色が残るため、Stingの声とベース、Stewart Copelandの細かなリズムを塞がずに済む。『Walking on the Moon』のDm11、『Don't Stand So Close to Me』のGR-300、2007年の再結成リグまで、機材史を編曲内の役割配分として読み直す。

Cynicは、なぜ重さと透明さを同じ曲に入れられたのか。音色を減らして余白を残すという設計

Cynicはデスメタルからクリーンへ転向したバンドではない。『Focus』の時点でギター二本、専任のデス・ヴォイス、ボコーダー、フレットレス・ベース、ギター・シンセを同じ編曲の中へ置き、重さを低域とゲインの総量ではなく、異質な音色が交替・透過できる余白として設計していた。1993年の『Focus』から、15年の空白を経た『Traced in Air』、約30本のトラックを重ねた『Carbon-Based Anatomy』、音色を二つへ削った『Kindly Bent to Free Us』、そして2020年に二人を失ったあとの『Ascension Codes』まで、機材史を編曲内の信号配分として読む。

Tom Morelloは、何を固定して何を自由にしたのか。制約が創造性を移した場所

Tom Morelloの独自性は、機材が少なかったことではない。アンプ・キャビネット・基本ペダル・ノブの位置を不変条件として固定し、その代わりにピックアップセレクター、二つのボリュームの差、トレモロ、Whammy、ワウ、ディレイ、ケーブル、フィードバックを演奏中の操作子へ変えたことにある。制約は選択肢を減らしたのではなく、創造性を製品選択から身体操作と作曲へ移した。

John McLaughlinは、音を守らなかった。音楽が変わるたび、ギターという入力装置を作り替えた

John McLaughlinは、一つの理想の音を守り続けた演奏家ではない。Mahavishnuの大音量ダブルネックから、Shaktiの改造アコースティック、1980年代のSynclavier、近年のMIDIギターとPRSまで、彼は所属する音楽のリズム・音程・音色を演奏できるように、ギターの役割と身体インターフェースを繰り返し作り替えた。名機の遍歴ではなく、演奏できる音楽の範囲を変える『インターフェース設計史』として読む。

Robert Frippは、音色ではなく方法論を設計した。仕組みを作るという演奏思想

ほとんどのギタリストは、音色を選ぶことで自分の音を作る。Robert Frippがやったのは、音を出す仕組みそのものを設計することだった。二台のテープレコーダーを繋いだFrippertronics、Roland GR-300による音源の置き換え、Eventide H3000を軸にしたSoundscapes。機材が変わっても一貫しているのは、演奏の前に系を作るという態度である。音色を設計するのではなく、方法論を設計するとはどういうことか。

Dimebag Darrellは、なぜソリッドステートを選んだのか。アタックを守るという演奏思想

真空管が正義とされた時代に、トランジスタアンプで一時代を作った弾き手がいる。Dimebag DarrellとRandall RG100ES。彼がソリッドステートを選んだ理由は、コストでも入手性でもなかった。ピッキングの瞬間を、アンプに丸めさせないためである。同じソリッドステートという選択が、Allan Holdsworthとは正反対の要求から出ている。技術ではなく要求が音を決める、という話。

Allan Holdsworthは、何を捨てたのか。音色ではなく『時間』を設計するという演奏思想

70年代から90年代にかけて、ギターアンプはピッキングと歪みの相互作用を磨き続けた。アタックの快感を設計する競争だった。その真っ只中で、正反対を選んだ演奏家がいる。Allan Holdsworth。Marshallを降り、Lab Series L5・Hartley-Thompson・Pearce G1という全トランジスタ機へ移り、しかしMesa/Boogieの真空管ラックへ戻り、その出口にはRocktron Juice Extractorを挿した。彼が拒んだのは真空管ではない。条件が勝手に動くことの方だった。密閉スピーカーボックス「The Coffin」にマイクごと閉じ込めて固定し、動いてほしくない変数を片っ端から潰していく。そこまでして最後に一つだけ自由に残したものが、音の時間である。

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